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アート

白と黒の対比〜版画に魅せられて50年〜

版画はいわば、絵画と彫刻の複合アート。だからこそ、随所に工夫のしどころがあります。生来の凝り性のせいか、独自に編み出したテクニックも数知れず。版画を用いた年賀状づくりは、もはやライフワークとなりつつあります。
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vol.1 版画と私の50年。

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vol.3 こだわり手法案内

真っ黒に塗りつぶした版木。ここに直接、絵を書きます。前回のイタリア村を描いた年賀状もこのやり方法でやっています。

愛用の版画用絵の具

190色もあるソフトパステル。
好みの色が自由自在に

長年の制作で、我流テクニックも登場。

 長年版画を作り続けていくうちに、これはと思うこだわりの手法や、独自のテクニックを発見することも多くあります。

 版画の作り方にも、色々なやり方があります。版画というのは、彫っている時に見ている絵と、刷り上りの絵が左右逆になります。これは古来からの手法のようですが、私の場合まず、薄手の和紙に墨で下絵を書きます。その下絵をひっくり返して、のりで版木に貼り付けます。のりが充分乾いてから、和紙と版木を一緒に彫ります。板と紙の間にのりがだまにならないように、ぴったり貼るのがポイント。のりが厚かったり、でこぼこしていると、うまく彫れなくなってしまうので注意が必要です。

 以上が通常の手法ですが、最近は少し横着になってきまして。この手法では手間がかかるので、もっと楽な方法を独自で考えて、それで作っています。

 まず、ローラーで版木を真っ黒に塗りつぶしてしまいます。このとき、塗りつぶすのに使用する絵の具には水のりを混ぜるのがポイント。長年の経験から自分で考え出したのですが、水のりを混ぜることによって、木にしみこみにくくなり、表面だけにきれいに色が付くのです。

 塗りつぶしたら、4Bの鉛筆であたりをつけて、アウトラインだけで絵を書きます。そしたら、もう一気に彫りに入ります。彫った状態がそのまま刷り上がった状態といった案配です。慣れているから出来るやり方でしょうね。



愛用の道具たち

1974年と1977年の作品で、額装して部屋に飾ってあるもの。この2枚の版画は意識的に背景を彫り残して「ボカシ」の効果を出したものでお気に入りの作品

刷り色づくりには、こだわります。

 刷り色にも様々なこだわりがあります。今は版画用の絵の具を使って刷っていますが、単色で刷ることはめったにありません。黒で刷ると決めても、必ず青や緑を少量混ぜて刷ります。そうすることで色に深みが出て、雰囲気がある仕上がりになるんです。

 昔は、こういう版画用の絵の具ではなく、水彩絵の具を使って刷っていました。その際、水彩絵の具にこれまた水のりを少し混ぜるんです。やはり水のりを混ぜることで、絵の具が木にしみこまず、しっかりと色がのります。これは試行錯誤する内に自分で編み出したオリジナルの手法です。

 また、私はパステル画も描くのですが、そのソフトパステルを利用して刷ることもあります。ソフトパステルをナイフでそぎ落として、少量の水と一緒に乳鉢ですり潰します。仕上げに水のりを少しだけ入れて、完成。これを刷りに使います。版画用絵の具と違って、ソフトパステルは非常に色のバリエーションも多いため、自分の好きな色が自由に作れて、腕のふるい甲斐がありますね。

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