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アート

白と黒の対比〜版画に魅せられて50年〜

版画はいわば、絵画と彫刻の複合アート。だからこそ、随所に工夫のしどころがあります。生来の凝り性のせいか、独自に編み出したテクニックも数知れず。版画を用いた年賀状づくりは、もはやライフワークとなりつつあります。
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vol.2 年賀状でつづる年代記

1981年の年賀状。二人の娘がモデル

1985年の作品。インディゴブルーの刷り色が思い出深い作品

イタリア村の夜景を参考にした最新作

版画で残す、家族の肖像。

 毎年、年賀状は、自作の版画で作っています。とはいえ年賀状は100枚以上も出すので、全て手刷りだと大変な労力です。なので、最近ではパソコンも併用しています。今年の年賀状は、6枚だけ手刷りをして、その中で最も良く出来たものをパソコンにスキャンして取り込み、インクジェットプリンタで印刷しました。この方法なら、手軽にたくさんのこだわり年賀状を出すことが出来ます。

 1981年の年賀状は、二人の娘をモデルに作りました。二人のその当時の特徴が、表情などによく表れていると思います。

 ただ、一点だけフィクションがありまして、長女はこんな振袖なんて着たことが無いはずなのですが、想像で彫ってしまいました。

 27年前の年賀状ですから、今では娘たちもとっくに成人しています。苦労しながら必死に幼い彼女たちの姿を版木に彫りこんでいた当時を思うと、写真とは違う感慨がありますね。

 家族や、家族にまつわる何かを題材にした作品は何度か作っています。1984年にも家族全員を描いた版画を用いて年賀状を作りました。ちょうどその時期、家族写真を年賀状にするのがブームでして。写真で作るくらいなら、とブームに抵抗して一生懸命版画を彫っていた記憶があります。



刷り色も大切な要素です。

 濃いブルーの作品は、もう少し進んで1985年の年賀状です。
私はずっと海運会社に勤めていたので、海や船を題材にした作品を多く作っているのですが、これもその内のひとつです。新日本丸という船の先端のところに付けられていた女神像をモデルに彫りました。絵の中にも書いてありますね。新日本丸は“太平洋の白鳥”と呼ばれた優美な大型帆船で、ちょうどこの年賀状の前の年にデビューしました。

 その横の「らん青」とは藍青、インディゴブルー(深みのある青)のこと。この手を合わせている女神像の名称でもあります。 刷り色もモチーフに合わせてらん青になっています。夜明け前の空の色、もしくは深い海の色です。



和紙づかいで、夜の灯りを写し取る。

 今年(2008年)の年賀状は、イタリア村の夜景を写真に撮影し、それを参考に彫りました。
版画の味わいというのは、黒と白の織り成すハーモニーだと思うのです。黒主体の(彫った部分が少ない)方が味わい深いと思うので、そんな作品をと心掛けています。刷り色は、一見黒一色に見えますが、版画用絵の具の黒に、緑を少量と、あとは水彩絵の具の黄土色をほんの少し混ぜています。夜景の柔らかな感じがよく表現できたと思います。

 このイタリア村の年賀状は6枚しか刷っていません。綺麗に刷れたものを選んで、裏側から水彩絵の具で着色してみました。和紙なので、裏側の色がぼんやりと透けて、夜の灯り特有の、あのぼうっとした雰囲気が出るのです。多色刷りとはまた一味違った色の使い方だと思いませんか?

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